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株と決算のおしゃべり日記
教授と生徒
決算短信をやさしく&楽しく解説。教授と女子生徒が株の世界をナビします。
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くら寿司 2025年10月期 第3四半期決算|増収も減益、原価高騰の逆風と北米黒字化の光

くら寿司の決算、意外な結果?

教授、くら寿司の決算をニュースで見たんですけど、売上は増えてるのに利益が減ってるって書いてあって驚きました。お客さんは入ってるのに、なんでそんなことになるんですか?

いい質問だね。くら寿司は確かに売上は増えている。コラボイベントや海外店舗の好調もあって集客力は健在なんだ。でもね、問題はコスト。原材料費や人件費が上がっていて、売上が伸びても“利益”が削られてしまっているんだ。

なるほど…お寿司が売れても材料費が高くなってるから、手元に残るお金が減ってるってことですね。

その通り。たとえばマグロやサーモンは輸入価格が高騰しているし、国内の人件費も上がっている。お寿司1皿の値段はそんなに上げられないから、原価率が上がってしまうんだよ。

うーん、人気があるから安心って思ってたけど、飲食業ってそんなに難しいんですね。

そうだね。だからこそ今回の決算は「売上は増収、利益は減益」という結果になったんだ。ただ、北米事業が黒字化したのは大きな成果でもある。

売上は伸びても利益は減る?外食業の現実

くら寿司が発表した2025年10月期 第3四半期決算(累計)は、売上高が前年同期比+4.5%の増収となり、集客面では引き続き健闘を見せました。しかし営業利益は-18.4%、純利益は-22.1%と二桁の減益。外食産業が直面する原材料高や人件費増が、同社の収益を大きく圧迫しました。

注目すべきは、国内では人気アニメやキャラクターとのコラボ施策が好調で、集客力を維持できていること。そして海外では北米事業がついに黒字化し、グローバル展開の成果が数字として表れ始めたことです。

一方で、営業利益率・純利益率はいずれも低下し、「売上が伸びても利益が残らない」構造的な課題が浮き彫りになりました。今回の記事では、この決算の数値を整理しながら、背景にある要因、良い点と課題を掘り下げて解説していきます。

売上増えても安心できないって、投資家にとってはちょっと複雑ですね。

そうだね。でもだからこそ「数字の内訳」を丁寧に見る必要があるんだ。数字は嘘をつかないけど、表面だけ見ていると勘違いしやすい。

目次

決算ハイライト|主要数値の確認

では、実際の数値を確認してみましょう。

主要数値(累計)|単位:百万円

指標2025年10月期3Q2024年10月期3Q増減率
売上高181,677173,893+4.5%
営業利益5,1896,362-18.4%
経常利益5,5716,817-18.3%
四半期純利益3,4614,441-22.1%
包括利益3,0576,380-52.1%
1株当たり純利益87.10円111.74円-21.9%
自己資本比率40.4%40.5%-0.1pt

出典:2025年10月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

ポイントまとめ

  • 売上高は増収(+4.5%)
     国内外での新規出店やコラボ施策が奏功し、売上は伸びた。
  • 利益面は減益
     営業利益は18%減、純利益は22%減。原材料費や人件費の高騰が直撃。
  • 国内事業
     「ちいかわ」や「にじさんじ」とのコラボ、万博出店効果で集客は好調。ただし原価高騰と人件費増が利益を圧迫。
  • 北米事業
     売上は順調に拡大(前年比+18.4%)。経常損失は縮小し、3Q単体で黒字化を達成。今後の利益貢献期待大。
  • アジア事業
     コラボ施策とフェア強化で堅調。売上・利益とも小幅増。
  • 財務健全性
     自己資本比率は40%台を維持。純資産は849億円と増加。
  • 配当
     今期は期末20円予想(前期は記念配含みで40円)。減配感はあるが、持続可能な配当に舵を切った形。

売上高は1,800億円を超えてるんですね!でも利益は去年より結構減っちゃってる…。

そうだね。営業利益は約51億円で前年より18%減、純利益は約34億円で22%減。特に包括利益は半減以上と厳しい結果になっている。

包括利益って何ですか?

いい質問だ。包括利益は純利益に加えて、為替差益や投資有価証券の評価益などを含めた“会社全体のもうけ”を示す指標だよ。海外展開している企業は為替の影響も大きいから、この数字が大きく動くことがあるんだ。

なるほど、北米とかアジアに進出してるくら寿司だから特に関係あるんですね。

また、自己資本比率は40.4%と前年からほぼ横ばいで、財務の健全性は一定程度維持されています。純資産も増加しており、バランスシートの安定感は保たれていると言えるでしょう。

売上が伸びてるのに利益が減ってるのってやっぱり気になるけど、財務は安定してるんですね。

経営環境が厳しくても自己資本比率が40%を保っているのは安心材料のひとつだよ。ただし利益率の悪化は看過できない課題だね。

傾向まとめ|売上増でも利益が減った理由

今回の決算を総合的に見ると、「増収減益」という言葉がまさにぴったり当てはまります。売上は前年同期比で伸びている一方、利益面では厳しい数字となりました。その背景にはいくつかの要因が重なっています。

  • 原材料費の高騰
     世界的なインフレ、円安の影響で、魚介類や輸入食材の価格が大幅に上昇しました。特に人気のサーモンやマグロは国際的な需要が強く、価格は高止まりしています。
  • 人件費の上昇
     国内の最低賃金引き上げ、海外での人材確保コスト増により、店舗運営費用が膨らみました。
  • 光熱費の増加
     電気・ガス代も高水準が続いており、店舗の固定費負担が増しています。
  • 集客は好調
     一方で国内外での集客は順調でした。「ちいかわ」「にじさんじ」とのコラボキャンペーンや、2025年大阪・関西万博への出店など話題作りに成功しています。

こうやって見ると、お客さんは増えてるのに、材料費とか人件費が“売上を食べちゃった”って感じですね。

まさにその通り。飲食業は売上の増加以上にコストの影響を受けやすいんだ。だから「売れている=儲かっている」とは限らないのが難しいところだよ。

良かった点|成長ドライバーはどこに?

厳しい決算の中でも、光明となる要素はいくつかあります。

  • コラボ施策の成功
     人気キャラクターとのコラボイベントが集客に大きく貢献しました。ファミリー層や若年層を中心に、来店動機を強く刺激しています。
  • 北米事業の黒字化
     前年同期は赤字だった北米事業が、第3四半期単体で黒字化を達成しました。寿司文化の浸透が進み、店舗展開の拡大が功を奏しています。
  • アジア市場の堅調推移
     台湾や東南アジアでの売上も堅調。コラボやフェアの工夫が奏功し、安定した成長を維持しています。
  • 財務健全性の確保
     自己資本比率40%以上を維持し、純資産は増加。将来の投資余力をしっかり残しています。

北米で黒字化ってすごいですね!アメリカで寿司が本格的に利益を生み始めたってことですよね?

そうだね。外食企業が海外で黒字を出すのは簡単じゃない。くら寿司が現地に合わせたメニューや店舗運営を工夫してきた成果が出ているんだ。今後はこの成功をどう広げるかが注目だよ。

課題・懸念点|立ちはだかるコストと競争

一方で、投資家が注意しておくべき課題も多く見えてきます。

  • 原材料費の高止まり
     魚介類の価格は短期的に下がる兆しが見えず、コスト圧迫は続きそうです。
  • 人件費の上昇
     特に国内では人手不足感が強く、アルバイトの時給上昇が止まりません。海外でも現地採用のコストが拡大しています。
  • 競争激化
     スシローやはま寿司、元気寿司といったライバル企業も積極的にキャンペーンを展開しており、客単価を上げづらい環境です。
  • 配当の減額感
     今期配当は期末20円予想で、前期の記念配を含めた40円からは減少。投資家からは“物足りない”と受け止められる可能性があります。

コラボとかで盛り上がってるのに、投資家からすると「配当少ないな…」って思われちゃうんですね。

外食産業は成長投資を優先することが多いから、高配当株のような安定感はないんだ。でも北米やアジアの成長が続けば、将来の配当拡充につながる可能性はあるよ。

ここまでの要点

  • 売上は増収だが、原価高・人件費増で利益は減少
  • 国内はコラボ施策で集客力を維持
  • 北米事業が黒字化、アジアも堅調
  • コスト圧迫と配当減額感は課題

教授、くら寿司ってお客さんにとっては楽しいイベントいっぱいだけど、投資家にとってはちょっとシビアに見ないといけないですね

そうだね。企業の成長力と収益性をどう両立させるか、そこがポイントなんだ

通期見通しと注目点

くら寿司は通期予想について、売上高を2,420億円、営業利益を70億円、当期純利益を43億円と据え置いています。第3四半期時点での進捗率は売上高で約75%、営業利益で約74%と、計画通りに推移していると言えます。

注目ポイント

  1. 北米事業の本格的な収益貢献
    今期の大きなハイライトは、北米事業が四半期単体で黒字化した点です。現地の店舗数は増加しており、今後は規模拡大に伴う収益性改善が期待できます。
  2. アジア市場の拡大
    台湾やタイなどの店舗は着実に売上を伸ばしており、今後の海外成長をけん引する可能性があります。
  3. 国内市場での競争
    集客はコラボ施策で維持できていますが、スシローやはま寿司といった大手ライバルがいるため、客単価を上げる工夫が求められます。
  4. コスト環境
    原材料費、人件費、光熱費が依然として高水準にあるため、収益改善には価格戦略や効率化が必須です。

教授、北米で黒字化したなら、この先もっと海外で伸びるってことですか?

現地での寿司人気は高まっているし、くら寿司独自の回転レーンやガチャガチャ式のキャンペーンは海外でも好評なんだ。ただ、成長には投資が伴うから、利益面ではまだ不安定な部分もあるね。

まとめ|くら寿司決算の総評と投資視点

くら寿司の2025年10月期 第3四半期決算は、「売上は順調だが利益は減少」という結果になりました。国内外の集客力は健在で、北米事業の黒字化は今後の成長シナリオを描く上で大きな前進です。

一方で、原材料費や人件費の高騰は続いており、利益率の改善が大きな課題となっています。

投資家視点では、短期的には減益や減配感が重しになる可能性があります。しかし、北米を中心とした海外事業の拡大や国内でのブランド力強化が長期的な成長ドライバーとなり得ます。外食産業は景気やコスト環境の影響を受けやすいため、投資判断は中長期の視点で行うことが重要です。

くら寿司ってお客さんにとっては“楽しい回転寿司”だけど、投資家にとっては数字との戦いなんですね。

株式市場では「イベントで盛り上がった」だけでは評価されない。利益を出してこそ価値があるんだ。

でも北米で黒字になったのは大きいですね。アメリカでお寿司が儲かるって、なんだか夢があります!

確かに。もし海外での展開がさらに拡大すれば、「回転寿司発のグローバルブランド」として評価される日が来るかもしれないよ。

そうなったら株価も回転レーンみたいにグルグル上がっていくかも?

そのジョークはなかなかセンスあるね。ただ回転しすぎて酔わないように、冷静に数字を見て判断するのが投資家の習慣だよ。

免責事項
本記事に記載された数値は決算短信や関連資料をもとにしていますが、四捨五入や単位換算により実際の公式発表値と若干異なる場合があります。
また、株式投資に関する見解はあくまで筆者の個人的な意見であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任において行ってください。

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