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信越化学工業2026年3月期第2四半期決算|電子材料が堅調も営業益17%減

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信越化学工業

電子材料は絶好調なのに、なぜ減益?

さあ、今日のテーマは「信越化学工業」だ。日本が誇る化学の巨人だね。

化学って難しそうだけど、あの“シリコンウエハー”とか作ってる会社ですよね?

その通り。実は、AIや半導体ブームの裏で、この会社が世界を支えていると言っても過言じゃない。

おぉ、なんかカッコいい。で、業績はどうだったんですか?

うむ、売上は増えたけど、営業利益は少し減っちゃったんだ。

えっ、増収なのに減益? なんで?

ふふ、今日はそこをじっくり見ていこう。AIで儲かるのに、思わぬところで苦戦しているんだよ。

信越化学工業といえば、「塩化ビニル樹脂」「半導体シリコン」「電子材料」「レアアース磁石」など、
私たちの暮らしや産業を支える素材を手がける日本屈指の化学メーカー。


そんな信越が発表した2026年3月期 第2四半期決算(2025年9月期累計)は、AI関連の需要拡大によって電子材料部門が好調だった一方、基盤素材が世界的な市況悪化で足を引っ張る結果となりました。

目次

AI需要で売上は微増、でも採算悪化が響く

2026年3月期第2四半期(2025年4月〜9月)連結決算によると、
売上高は1兆2,845億円(前年同期比+1.0%)と微増ながら堅調を維持しました。
しかし、営業利益は3,339億円(同−17.7%)、純利益は2,547億円(同−15.4%)と減益。

売上が伸びているのに利益が落ちている――その理由は主に、塩化ビニル樹脂(PVC)やシリコーンなど基盤化学製品の価格下落にあります。
世界的な景気減速、特に中国・東南アジア市場での需要鈍化が影響し、素材価格の調整が利益を圧迫した格好です。

一方で、電子材料セグメントでは、生成AI向けの高性能半導体需要が引き続き拡大。
ウエハー出荷量は前年を上回り、売上・利益ともに過去最高水準を維持しました。
特に300mmウエハーの需要が堅調で、次世代チップ生産への投資が追い風となっています。

つまり、AIブームが追い風だけど、素材全体の価格が下がってる。

なるほど。AIで稼いで、素材で減らしてる感じなんですね。

うん。それでも利益率は依然として高く、営業利益率は26%台をキープしている。やはり強い企業だね。

連結業績比較(百万円単位)

項目2023.3.Q22024.3.Q22025.3.Q22026.3.Q2
売上高1,409,3361,195,9021,266,4601,284,522
営業利益536,237381,919405,703333,935
経常利益559,026427,508442,924367,339
親会社株主に帰属する純利益392,324301,439294,117257,844
EPS(円)191.20149.65147.83136.61
自己資本比率(%)81.782.983.378.7
総資産4,612,4775,092,9095,636,0245,356,717

財務の安定感は依然として抜群

自己資本比率は78.7%と依然として高水準。
これは、上場企業の中でもトップクラスの“超健全経営”といえます。
加えて、同社は2024年度から続く自己株式取得(上限5,000億円)を着実に進めており、
資本効率の改善と株主還元の両立を図っています。

78%ってすごいですね!借金ほとんどない感じ?

そうだね。むしろ“借りずに回せる”レベルだよ。信越化学は、現金と利益で設備投資をまかなう企業なんだ。

投資家が注目すべき3つのトピック

  1. 電子材料セグメントがAI需要を受けて最高益更新ペース
     → 半導体用ウエハー・フォトレジスト材料の需要が拡大。
  2. 基盤化学品は市況調整で利益率が低下
     → PVC・シリコーン価格の下落が響く。
  3. 積極的な株主還元姿勢
     → 自己株式の取得に加え、配当は前年同水準を維持(中間配当53円予定)。

つまり、短期的には市況の逆風、長期的にはAIが押し上げる。

まるで“嵐の中でも前を向く”タイプの企業ですね。

セグメント別の動向|電子材料がAIブームをけん引、一方で基盤事業がブレーキに

信越化学工業の決算を語る上で欠かせないのが、「事業のバランス」です。
同社の収益源は大きく分けて基盤化学品(PVC・シリコーンなど)と、電子材料(半導体ウエハーなど)、そして機能材料・加工・商事事業の4本柱。

セグメント別売上高(百万円単位)

セグメント2023.3.Q22024.3.Q22025.3.Q22026.3.Q2
生活環境基盤材料651,600490,900509,400500,400
電子材料439,300424,800464,400496,300
機能材料255,300215,400226,000220,600
加工・商事・技術サービス63,00064,60066,50067,100
合計1,409,3001,195,9001,266,4001,284,500

セグメント別営業利益(百万円単位)

セグメント2023.3.Q22024.3.Q22025.3.Q22026.3.Q2
生活環境基盤材料289,800165,200152,100102,300
電子材料159,500154,200186,700170,600
機能材料73,50051,70053,80048,100
加工・商事・技術サービス14,00011,90014,90013,600
合計536,900381,900405,700333,900

基盤化学品事業|世界的な市況悪化で減収減益

まず、全売上の約4割を占める基盤化学品事業
塩化ビニル樹脂(PVC)とシリコーンが主力ですが、今期は中国・東南アジアの建築需要減少が直撃しました。
PVC価格が前年から下落を続け、販売数量は維持したものの採算が悪化。

営業利益は前年同期比で500憶減となり、全体の利益率を押し下げる要因に。
特に北米市場では、金利高止まりによる住宅着工の減少が響きました。

PVCって、パイプや住宅の外壁に使われるあの素材だね。

じゃあ、家を建てる人が減ると売上にも影響するんですね。

そうそう。世界的に建設需要が鈍ると、信越も巻き込まれるというわけだ。

一方、シリコーン製品も自動車向け・建設向け需要が弱く、価格競争が激化。
ただし、高機能シリコーン(耐熱・電気絶縁用など)の分野では、電子部品やEV向け需要が底堅く、
来期以降の回復に向けた足場を固めている状況です。

電子材料事業|AI需要で過去最高の販売を記録

今回の決算で最も明るい話題が、この電子材料セグメント
AIブームによる高性能半導体需要の急増を背景に、セグメント別では唯一売上高増になりました。(しかし営業利益は9%減)

AIが話題になると、半導体が必要になって、その材料であるウエハーが売れる。まさに“AIバブルの恩恵”だね。

でも、ウエハーって何層にも重ねるあの円盤ですよね?まさかそれが世界中で足りなくなるなんて!

そうなんだ。まるで“電子の田んぼ”を耕しているようなものだよ(笑)

また、フォトレジスト材料(露光工程で使う感光材)も堅調。
高精細パターン対応製品が増加し、EUVリソグラフィ向け需要が着実に拡大しています。
この領域は世界の半導体メーカーが次世代化を進める中で、信越の技術力が際立つ分野です。

機能材料・加工・商事事業|地味ながら安定成長

機能材料や加工・商事部門は、建築用接着剤、プラスチック製品、医療材料、精密成形品などを手掛けています。


特に医療・ライフサイエンス分野では新規顧客の拡大が進み、微増収を確保。
利益規模は小さいながらも、安定したキャッシュフローを生み出しています。

こういう“地味だけど確実に儲かる部門”が、信越の強みなんだ。

派手なAIだけじゃなく、足元の安定収益もある。まさに堅実経営ですね。

財務体質と株主還元|自己株式取得が示す「株主還元と資本効率化」への本気度

信越化学工業の決算を語るうえで欠かせないのが、その圧倒的な財務の健全性です。
2026年3月期第2四半期末時点の自己資本比率は78.7%と、上場企業の中でも群を抜いて高い水準。
現預金も約1兆円規模を維持しており、「無借金経営」と言っても過言ではありません。

一方で、信越化学はこの安定した財務を“守り”に使うだけでなく、積極的な“攻めの資本政策”にも転じています。
その象徴が、2024年度から継続中の自己株式取得(上限5,000億円)です。

自己株式取得の背景

同社はここ数年、利益成長の一方でPBR(株価純資産倍率)が1倍前後にとどまることを問題視。
高収益・高資本企業にも関わらず「割安株」とみなされる状況を是正する狙いがあります。

つまり、「これだけ稼いでるのに株価が安すぎる」と自分で思ったわけだね。

自分の株を自分で買うって、まるで“自信の証明”みたいですね。

そう。自己株買いは、株主に対して「私たちは将来に確信がある」というサインなんだ。

高い資本効率とROEの推移

ROE(自己資本利益率)は依然として11%台を維持しており、化学業界の平均(7〜8%)を大きく上回ります。
純資産を減らしつつも、利益を安定的に確保できていることが強み。
自己株式取得によって一時的に自己資本比率は低下しましたが、
それでも依然として70%後半をキープしており、経営の健全性にはまったく揺らぎがありません。

こうやって数字を見ると、まさに“株主に優しい企業”ですね。

うむ。利益が出ても無理な投資には走らず、株主と会社のバランスを取る。まさに信越流の経営だよ。

現金の使い道:研究開発と設備投資も並行

もちろん、株主還元だけに偏っているわけではありません。
今期の設備投資額は約2,000億円規模
米国テキサス州での半導体シリコン工場の増設、福島県郡山のシリコーン設備の増強など、
グローバル需要を見据えた投資を着実に進めています。

また、研究開発費も約370億円を計上。
EUVリソグラフィー向け材料や高耐熱樹脂など、次世代半導体や環境対応素材の開発に重点を置いています。

株主にも還元しながら、ちゃんと未来への投資も怠らない。

お金の使い方が“経営の教科書”みたいですね!

まさに、資本主義の優等生といえるだろうね。

通期見通しと注目ポイント|AI時代に輝く“素材王者”の戦略

信越化学は、2026年3月期の通期業績予想を据え置きとしました。
売上高2兆4,000億円、営業利益6,350億円を見込んでおり、慎重ながらも堅実なガイダンスを維持しています。

一見すると「やや保守的」に見えますが、これはPVC価格の回復時期が読みにくいため。
その一方で、電子材料分野の強さはむしろ拡大傾向にあります。

電子材料はAIブームの主役へ

生成AIの急速な普及により、データセンター向けのGPUやCPU需要は急増中。
それに伴って半導体シリコンウエハーの需要も高止まりしており、特に高純度・大口径ウエハーでは供給逼迫が続いています。

信越化学はこのトレンドを背景に、米国工場の増産を進めながら、
日本国内の生産ラインも効率化。2030年を見据えた「AI時代の素材供給網」を構築中です。

つまり、AIブームが続く限り、ウエハー需要は減らないってことですね?

そうだね。AIが進化するたびに、チップが増える。つまり“電子材料の金鉱脈”だよ。

基盤事業の回復シナリオ

PVCなどの基盤化学品は、依然として世界市況の影響を受けやすい構造。
ただし、インドや中東を中心に新興国の建設需要が回復傾向にあり、2026年後半以降は緩やかな市況反発が期待されています。

また、環境規制対応型の“グリーンPVC”開発が進んでおり、信越化学は「環境配慮型素材メーカー」としてのブランド強化も図っています。

投資家視点の注目ポイント

  1. 株主還元強化の継続性
     → 自己株買い余地と安定配当方針に注目。
  2. 電子材料セグメントの成長余力
     → AI半導体関連企業との長期契約が収益の柱に。
  3. PBR1倍割れの是正余地
     → 自己株取得+安定利益で株価の再評価期待。
  4. 為替感応度
     → 円安が進めば営業利益を押し上げ。

結局、信越化学は短期の波ではなく“長期の地盤”で勝負しているんだ。

確かに、どんな環境でも落ち着いて利益を出してる感じ。まさに“素材界のイチロー”ですね!

うまいこと言うね(笑)。派手よりも確実に打率が高い。それが信越化学の魅力だよ。

まとめ|AI時代における“堅実経営”の価値と投資判断

信越化学工業の2026年3月期第2四半期決算は、数字の上では営業利益−17.7%減と一見「減益決算」に見えます。
しかしその内実を読み解けば、電子材料事業の堅調な成長と、世界景気の波を受ける基盤化学品の一時的な減速という、“光と影が共存する決算”であることがわかります。

AI時代の波を最も大きく受けるのは、言うまでもなく半導体関連銘柄。
その中で信越化学は、世界トップシェアを誇る半導体シリコンウエハーを武器に、
AI需要の成長をほぼ“直接的”に取り込むポジションにあります。

減益の裏に見える「地力の強さ」

今回の決算で営業利益が減少した要因は、
主にPVC(塩化ビニル樹脂)やシリコーンなど基盤化学品の価格下落でした。
一方で、こうした逆風を受けながらも、営業利益率26%を維持している点が最大の注目ポイントです。
この数字は、一般的な化学メーカーの2倍に相当します。

また、自己資本比率が78.7%という圧倒的な水準にあることで、
為替や市況変動があっても、他社のように「借入で苦しむ」リスクが少ない。
つまり信越化学は“減益でも揺るがない会社”です。

信越化学の“AI時代の立ち位置”

信越化学は単なる素材メーカーではありません。
AI、EV、データセンターといった成長産業の“土台を作る企業”です。
世界が進化するたびに、信越の製品が静かにその裏で動いている――
そんな「縁の下の力持ち」こそが、この企業の本質と思います。

今後も電子材料を中心に、安定したキャッシュフローを生み出し続けることが期待されます。
市況の波が落ち着けば、再び最高益更新ペースに戻る可能性は十分にあるでしょう。

いやぁ、信越化学はまさに“静かな帝王”だね

派手じゃないけど、しっかり稼いでくるタイプ。まるで“仕事できる先輩”みたい!

しかも給料(配当)もちゃんとくれる(笑)

最高じゃないですか。結婚したいタイプの企業ですね。

おいおい、企業と結婚はできないよ(笑)でも、株主にはなれるぞ。

じゃあ、株主として末永くお付き合いしたいです!

信越化学工業のように「派手さより信頼」で成長してきた企業は、これからの不安定な世界経済の中でも光を放ち続けるでしょう。
AI時代の主役は“話題の企業”ではなく、“支える企業”なのです。

免責事項
本記事に記載された数値は決算短信や関連資料をもとにしていますが、四捨五入や単位換算により実際の公式発表値と若干異なる場合があります。
また、株式投資に関する見解はあくまで筆者の個人的な意見であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任において行ってください。

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