カフェの値上げと株の「値上げ」

教授、この前カフェに行ったらコーヒーがまた値上げされてて…



そうだね、インフレの影響で色々なものが高くなっているよ。でも、株の世界にも「値上げ」があるんだ。



株の値上げ?株価のことですか?



いや、株価じゃなくて“配当”のこと。毎年少しずつ配当を上げてくれる会社があって、それを「増配株」と呼ぶんだ。今日はその魅力と代表的な企業を紹介しよう。
増配株投資で得られる安心感
「高配当株に投資して配当金を得たい」という人は多いですが、配当金をただ“多く出している”だけでは将来の安心にはつながりません。
そこで注目されているのが「増配株」です。増配株とは、毎年少しずつ配当を増やしてくれる企業のこと。長期保有すれば実質的な配当利回りが上昇し、資産形成の強力な武器となります。
この記事では、
- 増配株とは何か
- なぜ今注目されているのか
- 国内の代表的な増配株4社(花王・伊藤忠商事・JT・三菱UFJ)の詳細
- 増配株投資のメリットとリスク
を、初心者にも分かりやすく解説します。
増配株とは?初心者でもわかる基礎
増配株とは「配当金を継続的に増やし続けている企業」のことです。
- 高配当株:現在の配当利回りが高い株
- 増配株:配当を年々増やしている株



イメージとしては「高配当株=最初からお得な定食」「増配株=毎年来店ごとにおかずが増える定食」みたいな感じだね。



わぁ!長く通えば通うほどお得になるんですね。
高配当株と増配株の違い
特徴 | 高配当株 | 増配株 |
---|---|---|
利回り | 現在高い | 初期はそこまで高くない場合もある |
将来性 | 業績次第で減配リスクあり | 継続的な成長と還元姿勢を確認できる |
投資対象 | 配当をすぐ欲しい人向け | 長期投資・資産形成を考える人向け |
なぜ今「増配株」が注目されるのか?
インフレ時代に強い
物価が上昇する中で、企業が配当を増やしてくれれば「実質的な購買力」を維持できます。
東証の改革要請
東京証券取引所は「資本効率の改善」を上場企業に求めています。特にPBR1倍割れ企業には、自社株買いや増配による株主還元を求める流れが強まっています。


政府の資産所得倍増プラン
岸田政権の政策により、株式投資を通じた資産形成を後押しする動きが拡大。増配株はその流れと相性が良い投資先です。



つまり、今は企業も「株主還元」を強化せざるを得ない環境なんだ。



それなら、増配株が注目されるのも納得です!
国内の代表的な増配株4社を徹底解説
花王|30年以上連続増配を続ける生活必需品メーカー
花王は「アタック」「メリット」など日用品を展開する生活必需品メーカー。最大の特徴は、30年以上連続増配という国内企業トップクラスの実績です。
- 強み:日用品は景気に左右されにくい安定需要
- 直近の動向:原材料高や中国市場の停滞で利益は圧迫されつつも、増配を継続
- 株主還元:配当性向を50%前後に維持、株主への安定した還元姿勢



花王は利益が一時的に減っても「増配は止めない」という姿勢を貫いているんだ。



まるで“どんな時でもお弁当のおかずは1品増やす”って決めてる家庭みたいですね。
- 1990年の配当金:1株当たり 9円
- 2023年の配当金:1株当たり 148円
- この間で 約16倍 に増加
もし1990年に花王を株価2,000円程度で買っていたら、当時の配当利回りは0.4%ほどでした。
しかし今はその株を持ち続けていれば、実質利回り(YOC)は7%超。
- 配当推移(抜粋)
- 1990年:9円
- 2000年:28円
- 2010年:70円
- 2020年:140円
- 2023年:148円
- 減配/据え置き:なし(毎年増配)
→ 国内企業で「真の連続増配企業」といえるのは花王が代表格。
伊藤忠商事|ROE重視の経営で株主還元を強化
伊藤忠商事は大手総合商社の中でも特にROE(株主資本利益率)を重視する経営スタイルで知られています。
- 強み:資源から消費関連まで幅広い事業ポートフォリオ
- 直近の動向:資源価格高騰で利益を拡大しつつ、消費分野でも堅調
- 株主還元:商社株の中でも株主還元を強化、配当性向30%→35%→40%へ引き上げ



商社株は「資源高で稼ぎ、配当で還元」という流れが強いね。伊藤忠はその中でも株主還元姿勢が特に強い。



資源と消費、両方を押さえてるから安心感がありますね。
- 2010年の配当金:1株当たり 40円
- 2023年の配当金:1株当たり 160円
- 13年間で4倍 に増配
2010年に株価1,000円程度で買った人は、当時の配当利回りは4%前後。
今も持ち続けていれば、実質利回り(YOC)は16%!
- 配当推移(抜粋)
- 2010年:40円
- 2015年:70円
- 2020年:85円(コロナ下でも増配)
- 2023年:160円
- 減配/据え置き:リーマンショック後に「一時的な据え置き」をした年はあるが、近年は連続増配傾向に近い
→ 「ほぼ連続増配」だが正式には花王のような完全連続ではない。
JT(日本たばこ産業)|高配当+増配+自社株買いの三拍子
JTは高配当株として有名ですが、近年は増配と自社株買いを積極的に実施しています。
- 強み:海外たばこ事業の安定収益、医薬・加工食品事業も展開
- 直近の動向:円安や海外販売の好調で利益を拡大、増配と自社株買いを発表
- 株主還元:配当性向を高め、株主に利益を還元する姿勢が鮮明



JTは「配当が高いだけ」じゃなくて、最近は株主還元戦略がさらに強化されているんだ。



高配当+増配+自社株買いなんて、投資家にとっては贅沢な組み合わせですね!
- 2000年の配当金:1株当たり 33円
- 2023年の配当金:1株当たり 188円
- 20年余りで約5.6倍 に増配
2000年ごろ株価2,000円程度で投資していた人は、当時の配当利回りは1.6%。
今はその株を持っていれば、実質利回りは9%以上。
- 配当推移(抜粋)
- 2000年:33円
- 2010年:38円
- 2017年:150円
- 2018年:150円(増配ストップ → 据え置き)
- 2020年:154円
- 2021年:130円(減配)
- 2022年:188円(回復)
- 2023年:188円
- 減配/据え置き
- 2018年:据え置き(増配停止)
- 2021年:減配(154円→130円)
→ 「高配当株」であるが、過去に減配あり。「連続増配株」ではない点は注意。
三菱UFJフィナンシャル・グループ|金利上昇の恩恵を受ける銀行株
日本最大の銀行グループである三菱UFJは、低金利時代には収益力が課題でしたが、金利上昇局面で利益が拡大。
- 強み:国内最大の金融ネットワーク、海外展開の拡大
- 直近の動向:米国金利の上昇で利ざやが拡大、利益は過去最高水準に
- 株主還元:配当性向の引き上げ、自社株買いを組み合わせて還元を強化。過去には減配・据え置き多数



銀行株はこれまで「低PBRで放置されている」代表格だったけど、今は資本効率改善を迫られて株主還元に積極的なんだ。



なるほど、増配に加えて自社株買いまでやるなら株価も期待できますね。
- 2012年の配当金:1株当たり 6円
- 2023年の配当金:1株当たり 41円
- 11年間で約7倍 に増配
2012年の株価は300円前後。当時買っていた人は利回り2%程度でしたが、今の配当を基準にすると、実質利回りは13%超に成長。
- 配当推移(抜粋)
- 2010年:6円
- 2012年:6円
- 2014年:9円
- 2016年:18円
- 2019年:25円
- 2021年:25円(コロナ下で据え置き)
- 2022年:32円
- 2023年:41円
- 減配/据え置き
- リーマンショック後(2008〜2012年)は低配当・据え置きが続く
- 2021年にも据え置きあり
→ 「近年は増配傾向」だが、長期的には何度も減配・据え置きを経験。
まとめ
企業 | 連続増配 | 減配歴 | 特徴 |
---|---|---|---|
花王 | 33年連続 | なし | 日本唯一の真の増配王者 |
伊藤忠商事 | ほぼ連続(10年以上) | リーマン後に据え置き | ROE経営+自社株買い強化 |
JT | 途中でストップ | 2021年に減配 | 高配当だが安定性には注意 |
MUFG | 連続ではない | 2008〜12年、2021年に据え置き | 金利環境と利益で上下 |
増配株投資のメリットとリスク
メリット
- 長期で保有すると実質利回りが上がる
- インフレに強い
- 株主還元姿勢を確認できる企業は安心感がある
リスク
- 業績悪化で増配が止まる可能性
- 無理な増配は財務に負担をかける
- 成長性が低い業種では株価上昇が限定的



増配株って“万能の投資”ってわけじゃないんですね。



そうだよ。大事なのは「なぜ増配できているのか」を見極めることなんだ。
今後の注目点|東証改革と増配株の未来
- 東証は上場企業に「PBR1倍割れ脱却」を求めており、増配はその手段のひとつ。
- 岸田政権の「資産所得倍増プラン」でも株主還元がテーマに。
- 海外投資家は「日本企業の還元姿勢が変わった」と評価し始めている。



つまり、これからは“日本株=配当が少ない”というイメージは変わるかもしれないね。



だったら増配株はこれからますます注目されそうですね!
まとめ|増配株は「時間を味方にできる投資」
増配株は「今すぐ配当が高い株」ではなく、「時間をかけて育つ株」です。
花王のように長期で増配を続ける企業もあれば、伊藤忠や三菱UFJのように還元姿勢を強化する企業もあります。
JTのように「高配当+増配+自社株買い」を組み合わせる企業も出てきました。
投資家に求められるのは「数字だけでなく、増配の背景を理解すること」です。



増配株ってまさに「じわじわ効いてくるサプリ」みたいですね。



いい例えだね。すぐ効く薬じゃないけど、長く続ければ体質が変わる。投資も同じなんだ。



これなら私も長期で安心して投資できそうです!



ただし無理な増配は要注意。企業の財務健全性もちゃんと確認しよう。



はい!“お得なセール品”じゃなく“長く続けられるブランド品”を選ぶ感じですね。



その通り。増配株は「時間を味方にする投資」だよ。